IFLAの思い出
公益財団法人兵庫県園芸・公園協会 橘 俊光
IFLAは、2013年のニュージーランド世界大会で第50回を迎えたが、私がIFLAに初めて関わったのは、1985(昭和60)年の第23回世界大会の東京と神戸での開催で、地元公共団体として神戸開催の一部をお手伝いした。それは、神戸ポートアイランドの国際会議場の一部屋で兵庫県・神戸市を紹介する展示ブースを設け歓迎することとなり、それを担当したことである。県・市の公園緑地関係課はもちろん観光、文化、広報担当課に協力してもらい、パネル、パンフレット・リーフレットや特産品などを並べた。そして、英語とハングルに堪能な女性を通訳、案内嬢にお願いして対応した。相楽園会館での歓迎レセプションや、内容は覚えていないが会議やワークショップにも参加した記憶がある。
その次に、参加したのは、1998(平成10)年にインドネシア・バリ島で開催された第35回の世界大会である。参加目的は2000(平成12)年に開催予定だった「国際園芸・造園博ジャパンフローラ2000」(淡路花博)のPRと、淡路花博時に開催予定の第10回IFLAイースタン地区大会をPRし、世界の皆さんに来ていただくことであった。石原憲一郎都市住宅部参事と私が参加した。淡路花博や姫路城、明石海峡大橋などのポスターやパンフレット、バッジなど20種類くらいのものを大会会場のホテルに事前に送り、開会直前に現地に到着し準備した。そして、バリ在住の日本人女性を通訳として採用し、彼女といっしょになり私も拙い英語を駆使して、各国参加者に必死になって説明した。(写真は、第35回IFLAバリ世界大会での会長他役員メンバー)
世界大会の会議では、イアン・マックハーグが招待されて、彼の講演を聴講したが、くせのある英語のうえ、内容も全く理解できなかった。しかし、私にとっては“あのマックハーグ”であり、彼を羨望のまなざしで見ていたことが思い出深い。閉会式では、石原参事から2000年の淡路花博とイースタン地区大会開催のPRと招致を英語で行い好評をいただいた。(写真は、第35回IFLAバリ世界大会会場でのジャパンフローラ2000(淡路花博)と第10回IFLAイースタン地区大会開催PRブース(石原参事と通訳))
エクスカーションでは地域の棚田見学ツアーに参加したが、貴重な経験であった。日本の田舎や農村もかつてこうであったような、妙になつかしい風景と農民の生活を垣間見た。ほとんど裸に近い格好の老人や日に焼けた農夫が農作業をしている横を、ぬかるみの棚田のあぜ道や村々の田舎道、林の中を歩くもので、日本ではもうなかなか経験できないカントリー・ウォーキングだった。なかには、そのエクスカーションの内容がわかっていなかった南米の女性参加者は、ハイヒール姿できており、こんなツアーには参加できないと、スタートしてまもなく怒ってホテルに帰ってしまった。気の毒な気がしたことを覚えている。
第10回IFLAイースタン地区2000年大会は、淡路花博開催中の2000年8月30日から9月2日までの4日間で、淡路島の淡路夢舞台国際会議場、その後の2日間は京都の庭園見学中心のポストコンファレンスツアーが行われた。
組織委員会会長は、小林治人ジャパンイフラ会長、組織委員会事務総長は、イースタン地区議長でもあった杉尾伸太郎イフラ副会長、海外参加者約30名で、全体は約250名の参加であった。世界、全国からたくさん参加いただき嬉しかったことを思い出す。
国際会議場での中村一京都大学名誉教授らの基調講演、各セッションでの論文発表、そして、北淡町震災記念公園や兵庫県立淡路景観園芸学校を視察するテクニカルエクスカーション、合間の淡路花博視察と盛りだくさんだった。大会のテーマは「地球時代における地域ランドスケープの再生と創造への戦略」だった。
私にとってやはり忘れられないのは、国際会議で初めてセッションで発表するという機会をいただき経験したことであろう。開催地地元として何らかの発表をすべしの雰囲気があり、自分がしなければいけないものとの思い上がりから、兵庫県での公園緑地・緑化施策の取り組みについて発表した。その時の発表はスライドであったのもなつかしい。1枚1枚丁寧に準備したつもりが、実際の発表時にはアクシデントもあり、今思い出しても赤面する。完璧というのはないのだ、あるいはいくら入念な準備をしてもしすぎることはないという教訓と、国際会議等での発表の場数を踏むことの重要性も実感した。プレゼンの仕方、時間の使い方、話し方等々。おかげでその後の学会発表など、私の原点になっている。
こうして昔の資料を手繰りながら、その当時のことを思い出すのは懐かしさと自分のかつての若さであり、今思うと恥ずかしくもあるが、その時必死に取り組んでいたことを思い起こし、胸に沁みるものがある。
IFLAの世界大会などで各国のランドスケープ・アーキテクツと直に接し、話し議論することを、特に若い人たちに経験していただきたいと強く願うものである。(肩書はすべて当時のものです)
橘 俊光 Tachibana Toshimitsu
1976年北海道大学農学部卒、同年兵庫県庁入庁。建設省都市局公園緑地課、兵庫県県土整備部において、一貫して公園緑地・都市緑化行政に携わる。2013年4月から公益財団法人兵庫県園芸・公園協会理事兼国営明石海峡公園管理センター長。兵庫県立大学大学院(専門職)緑環境景観マネジメント研究科非常勤講師、一般社団法人日本公園緑地協会理事など多数。